研究機関内に、金属クエン酸とエチレングリコールとの間のポリエステル化反応に基礎を置く錯体重合法を用いて、BaTiO_3をモデル化合物として、合成反応機構や液相に含まれる錯体種の同定を目的とする分光学的研究を実施した。ラマン散乱と^<13>C-NMR分光法より初めて見い出された重要な知見は、TiとBaはエチレングリコール(EG)溶媒とし、クエン酸(CA)共存下でBa-Ti異核複合クエン酸錯体を形成することであり、この異核複合錯体を強固に内包するイオノマーが金属の偏析を抑える役割を果たし、その結果、低温で高純度・均質BaTiO_3の合成が可能になることを明らかにした。実際に、錯体重合法により、通常の方法では均一性が保証できないBaTiO_3粉末原料を400-500℃として比較的マイルドな条件(通常1000℃前後の温度を必要とする)で合成できることがわかった。また、このような異核複合錯体の形成には、クエン酸のアルコール性-OH基の存在が重要であることを明らかにし、簡便かつ正確な複合錯体の同定手段として^<13>C-NMRが有効であることを初めて示した。同様に、各種チタン酸塩、たとえばSrTiO_3、PbTiO_3、CaTiO_3、La_2Ti_2O_7などの合成も錯体重合法により、従来法と比べて400-500℃低温で合成できることが明らかにされた。とくにSr/Ti、Pb/Ti、Ca/Ti、La/Tiなどの組み合わせにおいて、異核複合金属クエン酸錯体の形成が^<13>C-NMRから示唆された。この錯体をポリマー中に内包させることにより、金属の偏析を強固に防ぐことが可能であり、分子レベルでほぼ均一な前駆体を得ることが可能になったものと考えられる。
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