研究概要 |
本年度の研究成果は以下のようにまとめられる。 (1)2重構造をもつCu(芯)/Cu_2O(殻)ナノコロイドをCuとFの共注入により、アモルファスシリカ中に生成することに成功した。このような複合構造をもつナノコロイドは1988年にHackeにより大きな非線形光学効果をもつことが理論的に指摘されて以来、その実現に向けた努力がなされてきたが、本研究により初めて実現したことになる。また、このような複合コロイドの生成には注入のシ-クエシスが決定的に重要であることが明らかになった。これは化合物のコロイドと生成を目的とする場合にキ-となるクライテリオンである。 (2)Geナノ結晶のH^+注入による生成。Geナノ結晶はSiナノ結晶と同様に量子サイズ効果に起因する赤色発光が観測されるので感心が高い。その合成法としてはGeとSio_2とスパッタとGeのSiO_2へのイオン注入が報告されているが、いずれの場合も600℃以上でのポストアニーリングが必要であった。今回、GeO_2-SiO_2ガラスにプロントを注入することで加熱なしにGeナノ結晶の生成が可能であることを見出した。He^+イオンの注入では生成しないので化学的相互作用が決定的役割りを果たすとの結論に至っている。発光特性については現在検討中である。 (3)イオン注入によるナノサイズコロイドの生成と基板ガラスの構造との関係を明らかにした。F,PおよびGeをドープしたシリカガラスにCuを同一量注入することでコロイド生成の有無をTEMで調べた。その結果、Pをドープした場合のみCuのコロイドの生成が著しく減少することが明らかになり、非架橋酸素の有無がコロイド生成の容易さを支配すると結論した。
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