研究概要 |
本年度は本計画の2年目(最終年)にあたる。新量子ドット材料として現在まで実現していない物質としてヒ素とゲルマニウムをとりあげた。以下にアプローチと成果を要約する。 (1)アモルファスAsについては本研究者が1993年度に提案したSiO_2へのイオン注入によるナノサイズコロイド生成に関するクライテリオン(JJAP)によれば可能であるにもかかわらず、今まで報告されていなかった。SiO_2ガラス基板に300KeV,2×10^<17>cm^<-2>のAs^+を注入することにより3〜5nmのアモルファスのヒ素コロイドが生成することをTEM観察で確認した。Tauc plotから求めた光学的バンドギャップは1.7eVでバルクのアモルファスAsのそれよりも〜0.5Vほどブルーシフトしていた。縮退4波混合法(光源XeCl励起色素レーザー,パルス幅20ns)で評価した3次の非線形光学感受率χ^<(3)>は〜4×10^<-8>e.s.uであった。同様の結果はPについても得られたので、アモルファス物質のナノサイズ半導体においても吸収バンドギャップの量子サイズ効果と大きなχ^<(3)>が観測されることが示唆された。 (2)ガラス中に埋入されたナノサイズGe結晶は赤色発光を示すなどバルク状態にみられない物性を示すことが最近明らかになっている。本研究ではSiO_2-GeO_2ガラスにプロトンをイオン注入することによりナノサイズGe結晶の生成を検討したところ、1.5MeVのH^+を1×10^<18>cm^<-2>注入するとas-implanted stateで8〜10nmのGe微結晶が形成されることを見出した。従来、GeとSiO_2の共スパツタ-やゾルゲル法などの従来法では700℃程度での加熱処理が不可欠であったが、本法では加熱は全く必要としない。その生成機構を詳細に検討しガラス自体がナノメートルオーダでのGe^<4+>の分布の不均質構造を有し、GeO_2 rich相内で高密度電子励起による酸素の脱離とそのプロトンとの化学反応によるOH生成を経てGeナノコロイドが形成されるというモデルを提案した。
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