研究概要 |
1.蛋白質工学上の諸問題を解決するための一環として,SH基と特異的に反応し,混合ジスルフィド結合を速やかに形成するメタンチオスルホネート誘導体を種々合成した.これらの試薬は側鎖に正電荷,負電荷,あるいは中性親水基を持ち,還元蛋白質と反応させるとSH基にそれぞれ正電荷,負電荷あるいは中性親水基が可逆的に導入できる. 2.大腸菌にジスルフィド結合を有する外来性蛋白質を生産させると,N末端が天然蛋白質とは異なる不溶性の変性蛋白質が得られるので,これを天然型に変換するためには変性蛋白質を水に可溶性とし,酵素的にN末端をプロセスした後,SH-SS交換反応により天然構造に巻き戻す必要がある。そこでジスルフィド結合を有する種々の蛋白質を還元後,生じたSH基を不可逆的にアルキル化することにより種々の電荷を導入した変性蛋白質を調製した。その結果,変性蛋白質の総電荷が疎水性残基1個当り+0.17以上または-0.32以下であれば1mg/ml以上の溶解度を示すことが明らかになった. 3.化学修飾リゾチームを用いて還元状態からの巻き戻しの収率に及ぼす総電荷の影響を調べた結果,総電荷が大きいほど高濃度でも高収率で巻き戻ることが明らかになった。 4.1.で調製した可逆的SH基の修飾試薬で還元蛋白質のSH基に電荷を導入した結果,塩基性蛋白質であるリゾチームには正電荷を,また酸性蛋白質であるBSAには負電荷を導入すると,水に可溶性となることを確認した。また生成した混合ジスルフィド結合は中性または酸性で安定であった. 5.これらの試薬を大腸菌に生産させた外来性蛋白質のN末端プロセッシングに利用するために,可逆的修飾部位[(Cys)_8]とFactorXaプロテアーゼに特異的なアミノ酸配列をN末端に持つ融合リゾチームを大腸菌に発現させる系を確立した。
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