研究概要 |
生理活性δ-ラクトン類の骨格合成法の開発は重要な研究課題の一つであるが、古典的方法の改良研究ではなく、概念的にまったく新しい一段合成法を検討した。母核には飽和のアルコールを、また、カルボニル部分には一酸化炭素を組み込むことを目標とした。このため、飽和アルコールにおける4位のヒドロキシ基を遠隔点活性化の手がかりとした。すなわちアルコールの一電子酸化により発生させたオキシラジカルがC5位の水素を引抜き、目的炭素ラジカルを発生させ、これと一酸化炭素の反応を期待し、詳細な検討をおこなった。 本年度においては各種の一電子酸化剤のスクリーニング(Ce,Mn,Co,V,Pbなどの金属塩酸化剤)を行ったが、四酢酸鉛を用いることにより期待した反応が良好に生起することを見いだした。最適条件系を詳細に検討した結果、本δ-ラクトン類の新規骨格合成法について以下のような知見を得た。 (1)1級アルコールと2級アルコールに適用できる。 (2)4位のヒドロキシ基のついた炭素は1級のものと2級のものに適用できる。 (3)4位のヒドロキシ基のついた炭素は立体保持で反応が進む。 (4)4位のヒドロキシ基のついた炭素が2級の場合にTHF環の生成が競争反応となる。一方その抑制にはCO圧力の向上が効果的である。 (5)50℃以下の低い温度が良い結果を与えた。 まとめると、本研究の推移はきわめて順調であり、生理活性δ-ラクトン類の骨格合成への応用に向けて、計画どおりにその基礎が構築できた。
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