研究概要 |
有機スズ/銅(I)複合反応系に於ける活性反応種の生成とその挙動に影響を与える諸因子の究明と、そこで惹起される炭素-炭素結合形成反応の開発について研究を行なった。今年度の研究実績は、以下の二項目に要約される。 (1)アルケニルトリブチルスズと銅(I)塩化物との反応で生成するアルケニル銅(I)と種々のアリルハライド、アルケニルトリフラート等との反応を行ない、相当するアルケニル化体を得ることに成功した。一方、アルケニル銅(I)は、不均化により1,3-ジエンに変わるが、この際脱離する銅(O)反応種が、極めて活性であることを明かにし、その反応挙動について検討を進めた。 (2)前項のアルケニルトリブチルスズ/銅(I)塩化物系で発生するアルケニル銅(I)を複雑な化合物の合成の鍵段階に適用する研究を並行して進め、新世代抗生物質として期待される3-アルケニルセフェム誘導体および三環性セフェロスポリン等の新規合成ルートの開拓に成功している。 今後、有機スズ/銅(I)複合系に於けるアルケニル銅(I)の安定化/活性化におよぼす諸因子の解明、炭素-炭素結合形成の立体化学制御、および複雑な化合物の合成への適用等々について、さらに検討を加えていく予定である。
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