メタクリル酸エステルのTHF中のアニオン重合系にジエチル亜鉛を添加すると末端エノレートアニオンは安定化し、重合速度は多少低下するがほとんど失活しなくなるため多段ブロック共重合が可能になることを見いだした。この方法を用いて親水性セグメントとしてポリ(メタクリル酸セシウム塩)、疎水性セグメントとしてポリメタクリル酸イソプロピルを有する3-5段ブロック共重合体を合成し、その一次構造および溶液中の集合構造を解析した。得られた多段ブロック共重合体のメタノール溶液をベンゼン中に注ぐと不溶物となるが、徐々にベンゼンに溶媒交換するとベンゼンあるいはTHFに可溶な白色固体として単離できることがわかった。このベンゼン可溶なポリマーを凍結乾燥、精製し、THF中で光散乱測定をおこなうと、3段および5段ブロックポリマーともに見かけの分子量は約10^6となりTEM観察の結果を参考にして、会合数が数100の円筒状ミセルを形成していることが推定された。これをポリスチレンゲルを充填したカラムに通すと、会合数が5-10の分子量分布の比較的狭い会合体が生成していることが示された。このことは20段程度の多段ブロック共重合体がユニマ-ミセルを形成する可能性を示唆している。 また、親水性セグメントとしてポリ(HEMA)、疎水性セグメントとしてポリ(メタクリル酸tert-ブチル)、疎水性、疎油性セグメントとしてポリ{メタクリル酸2-(パ-フルオロブチル)エチル}を選びその結合順序の異なる3種のABC型ブロック共重合体を合成した。各セグメントの結合順序を変えたABC型ブロック共重合体ではクロロホルム、メタノールなどの選択溶媒中で異なる集合構造を形成していることがNMR測定から推定された。
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