研究概要 |
本研究では、新規なπ電子系物質群の設計・合成ならびに光・電子機能性材料への応用を目的として、以下の検討を行った。 (1)オリゴチオフェンを側鎖に有する新規高分子の合成、物性およびエレクトロクロミック特性 オリゴチオフェンに基づく優れた光・電子機能にフィルム形成能および耐久性を付与した新規な高分子の開発を目指して、チオフェン3量体および4量体を側鎖に有するビニル型高分子poly(5-vinyl-2,2′:5′,2″-terthiophene)(PV3T)およびpoly(5-vinyl-2,2′:5′,2″:5″,2'''-quaterthiophene)(PV4T)を、対応するビニルモノマーの電解重合および触媒重合で得た中性高分子の電気化学的ド-ピングによって合成した。合成した高分子は、電気化学的脱ド-ピングおよびド-ピングにより、PV3Tでは青紫色と淡黄橙色、PV4Tでは緑色と淡黄色の鮮明な可逆的色彩変化を示し、それぞれ2秒間のド-ピングおよび脱ド-ピングのサイクルを500回繰り返しても、可逆な色彩変化が観測された。これらの高分子は、鮮明な可逆的変化を示し、オリゴチオフェンの鎖長を変化させることにより表示色を変化させることができる新規なエレクトロクロミック材料として期待される。 (2)オリゴチオフェンを用いるpnヘテロ接合型光電変換素子の作製と特性 新しい光電変換用有機材料の開発を目指して、これまで研究の行われていなかったオリゴチオフェンの光電物性について検討した。p型半導体としてチオフェン5量体および7量体、n型半導体としてペリレン顔料を用いてpnヘテロ接合型光電変換素子を作製し、それらの特性を比較検討した。オリゴチオフェンの共役鎖長が5量体から7量体へと長くなると、変換効率は大きくなり、ITO/ペリレン顔料-チオフェン7量体/Au素子は、ITO電極から白色光(46mWcm^<-2>)を照射した場合、フィルタファクター0.5、照射光に対する変換効率0.2%を示した。以上の結果から、オリゴチオフェンが優れた光電変換用p型有機半導体として機能することがわかった。
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