蒸着重合法を用いた有機エレクトロルミネッセンスデバイスの研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06453156
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 筒井 哲夫 九州大学, 大学院総合理工学研究科, 教授 (40037982)
• 研究分担者: 江良 正直 九州大学, 大学院総合理工学研究科, 助手 (30191927)
• キーワード: 蒸着重合 / 色素薄膜 / エレクトロルミネッセンス / 発光機能 / キャリヤ輸送能 / 連結器 / 真空蒸着 / モノマー

研究概要

本年度は蒸着重合法による超薄膜作製技術を確立ための材料探索を引き続き実施すると同時に、蒸着重合法を用いたELデバイス作製とその基本性能の評価の研究を実施した。
1)これまで研究室で蓄積してきた蒸着薄膜を用いた低分子色素類の分子設計の指針を参考にして、主鎖上にキャリヤ輸送機能並びに発光機能を有する多種の高分子を分子設計し、実際に合成した。
2)上述の高分子を湿式法で製膜し、EL素子を作製し、その発光特性を調べ、真空蒸着法で作製したEL素子の場合と比較した。その結果、適切な分子設計指針で設計すれば、主鎖上に機能基を有する高分子を用いて作製したEL素子の初期特性は真空蒸着法で製膜した素子とほんど遜色がないことが明らかになった。このことは、蒸着重合法で製膜した高分子薄膜を用いるEL素子の基本性能が低分子色素の蒸着膜の場合と差がないことを実験的に確認できたことを意味する。
3)蒸着重合では2種のモノマーの重合反応で基板上で進行させる必要があり、2種のモノマーの連結基は重縮合や重付加反応で形成させる必要がある。そこで、導入した連結基がEL素子の発光特性に及ぼす効果を予め検討した。アミド結合、イミド結合、エステル結合、ウレタン結合を検討した結果、キャリヤ注入・輸送能の優劣並びに励起状態の消光効果の存在のため、ウレタン基以外は使用できないことが判明した。
4)蒸着重合装置を整備して、EL素子に用いる蒸着重合薄膜の製膜実験を実施した結果、ポリウレタン薄膜の場合はEL素子を作製できたが、それ以外の重合系では、EL発光が確認できるEL素子の作製には成功しなかった。

研究成果

• [文献書誌] Tetsuo Tsutsui: "Control of spontaneous emission using microcavity structures in organic electroluminescent devices." Synthetic Metals. 71. 2001-2004 (1995)
• [文献書誌] Ei-ichiro Aminaka: "Effect of electronic nature of emission layer materials on emission region in organic thin-film electroluminescent device." Synthetic Metals. 71. 2009-2010 (1995)
• [文献書誌] Noriyuki Takada: "Strongly-directed emission from microcavity structure in electroluminescent diodes with europium complex as an emitter." Synthetic Metals. 71. 2099-2100 (1995)
• [文献書誌] Dong Uk Kim: "Design and synthesis of Processable electroluminescent polymer with charge transport capability." Polymer. 36. 2481-2483 (1995)
• [文献書誌] Ching Piao Lin: "Emission characteristics of electroluminescent devices using molecularly-doped polymer films." New Polymeric Materials. 4. 277-288 (1995)
• [文献書誌] Dong Uk Kim: "Comparison of device preformance in two thin-film electroluminescent devices made of vaccum-sublimed dye film and spin-coated polymer film." Jpn. J. Appl. Phys.34. 6255-6259 (1995)