研究概要 |
高レベル放射性廃棄物の地層処分のために各種組成の硼珪酸塩ガラスの熱水溶液への溶出と,水熱条件下での結晶化を調べるための準備として,熱水への鉱物の溶解度を測定する無人システムの開発を試みた.ある鉱物例えばNaClを含む水溶液の電気伝導度を,電気炉を加熱しながら測定すると,鉱物が固相として存在する場合と,すべて溶解した後で,温度に対する伝導度の増加割合が変わる.この温度に対する伝導度の増加割合が変化するときの温度が,当該組成をもつ水溶液の溶解度に対応する.実際の測定では,溶解速度や過飽和現象を考慮して,温度-電気伝導度線における折れ曲がり点を,その温度付近で繰り返し測定する必要がある.そこで,温度と電気伝導度の関係を計算機で処理し,その結果にもとづいて電気炉の昇温および降温を制御できるシステムの開発を進めている.このシステムが完成すると,溶解度が自動的に測定できるようになり,硼珪酸塩ガラスの溶解と結晶化の過程を詳細に調べられるはずである.この開発と平行して,従来の実験で得られいる硼珪酸塩ガラスの処理物を電子顕微鏡で観察する作業も進めている.現在のところ最適の観察条件を見つけるための予備的作業に留まっているが,いくつかの新しい知見も得られつつある.ただし,現在観察に使用している分析電子顕微鏡のX線検出器がエネルギー分散型であるため,硼素の分布を調べることができず,今後これに対する対策を考えなければならない.
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