研究概要 |
高レベル放射性廃棄物をガラス固化体にして地下に埋設する方法,すなわち地層処分法がその実現化に向けて検討されてきている.本研究では,ガラス固化体評価のための基礎研究の一つとしてSrやCsを含む硼珪酸塩ガラスを作成し,それの熱水条件下(200℃,250℃)での変質過程を検討した.実験に使用したガラスは15種あり,それぞれSiO_2,Al_2O_3,B_2O_3,Na_2Oを必須含有成分とする.含有量(重量%)は以下のようである.SiO_2=45〜50,Al_2O_3=5〜10,B_2O_3=15〜17,Na_2O=10〜11,この他に,ガラスによりCaO=5〜10,SrO=5〜15,Cs_2O=7.5〜15%程度含有する.CaOをC,Na_2OをNとして表示すると実験に用いたガラスを組成により6種に大別できる.1)NSrCs型,2)CNSrCs型,3)NSr型,4)CNSr型,5)NCs型,6)CNCs型である.ガラスの組成を考慮して生成した沸石相を検討すると以下のような結論に至る.200℃では,NCs型ガラスからはアナルサイム(アナルサイム-ポルサイト)系鉱物のみ,NSrCs型とNSrガラスからは主としてアナルサイム系鉱物と少量のヒューランダイト(ヒューランダイト-Srヒューランダイト)系鉱物が生成する.また,CNSrCs型やCNSr型,それにCNCs型ガラスからはアナルサイム系鉱物とモルデナイト(モルデナイト-Srモルデナイト)系鉱物が生成する.一方,250℃ではCNSrCs型ガラスからアナルサイム系鉱物とワイラカイト(ワイラカイト-Srワイラカイト)系鉱物が生成した.アナルサイム系鉱物とヒューランダイ系鉱物が共存する場合のアナルサイム系鉱物の組成を検討すると,1)加熱時間の短いアナルサイムほどCs濃度は低い,2)加熱時間の上昇と共にアナルサイム系鉱物のCs濃度は上昇するが組成変動の幅も広くなり,3)Na/Cs比は加熱時間が長くなるに従い0.9から1.5に変化する.これは加熱時間の増加に伴いアナルサイム中のSr濃度が増加するからである.アナルサイムとモルデナイト共存のアナルサイム系鉱物はNaとCs置換関係が極めて直線的であることを示す.Srが選択的にモルデナイトに濃集するからである.
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