研究概要 |
チューリップ球根に貯蔵されたデンプンと貯蔵タンパク質の低温による分解促進機構を、促成栽培のための低温処理を施した球根と施さない対照区の球根を用いて比較検討した。 貯蔵炭水化物の大部分をしめるデンプンの分解は、低温処理区球根では、低温貯蔵中および定植後の温室栽培中にも促進されたが、対照区ではデンプン分解は極めて緩慢であった。アミラーゼ活性を比べると、低温処理区の方がやや高いものの、対照区でも8月から10月にかけて、活性の上昇が見られた。リン片内のアミラーゼの局在性を、デンプン薄膜法とリン片分画後に酵素活性を測定した結果から、対照区では表皮部近傍にのみ強い活性があり、デンプンの集積しているリン片内部にはアミラーゼ活性がほとんどなかった。一方、デンプン分解の見られた低温処理区のリン片では表皮部とともにリン片内部にも活性が誘導されていた。この結果は、低温処理は、実際にデンプンの集積しているリン片内部細胞のアミラーゼを誘導するものと考えられた。リン片のα-アミラーゼを精製し、その性質を調べた。活性の最適温度75℃、最適pH5.0-5.6,で酵素の安定性のためにCa^<2+>を必要とした。また、Cu^<2+>、Hg^<2+>で阻害を受けた。これらの性質は、他の植物アミラーゼとほぼ共通した。アイソザイムは、2-5個見られた。 チューリップ球根の貯蔵タンパク質は、33、21、22、32kDaの成分が主体であるが、低温処理期間に22、32kDaのペプチドが分解され、17kDaのペプチドが増加した。また、遊離のアミノ酸濃度も低温処理で上昇した。低温処理により、エンドペプチダーゼとアミノペプチダーゼ活性が上昇した。貯蔵タンパク質成分のうち、21kDaの成分を単離精製した。キャピラリー電気泳動装置で貯蔵タンパク質の分離条件を検討したところ、電解のpHにより分離パターンが大きく変化した。
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