研究概要 |
1.degRのプロテアーゼ生産促進作用をさらに促進する遺伝子としてproBが得られているが、その下流に位置する遺伝子は塩基配列決定の結果proAであることが大腸菌のproAとの相同性から判明した。proAをマルチコピーで枯草菌に導入すると欠失がおきてしまい、プロテアーゼ促進効果を判定することは不可能であったが、染色体上のproAを破壊するとプロテアーゼの生産量が落ちることからこのproAも何らかの形で生産に関与していることがうかがわれる。一次代謝に関与する遺伝子proB,Aが、プロテアーゼ生産という生育が停止した細胞に特異的に起こる現象に関与していることは興味ある発見である。 マルチコピーのproBはdegRとプロテアーゼ生産において相乗作用をしめすが、マルチコピーのdegQとともに存在してもこのような作用は観察されなかった。このことはproBがdegRとともにプロテアーゼ遺伝子の発現にいたる過程で、同じルート上にある遺伝子群の発現を別々に促進している可能性、または共同して同一の過程に働いている可能性を示唆していると解釈される。 proB遺伝子の中にNotI部位があり、これを指標に枯草菌のゲノム(4188 Kb)のNotI地図上にマッピングを行い、本遺伝子は1375Kb部位に存在する遺伝子であることが判明した。 2.マルチコピーのproBをdegSあるいはdegU遺伝子欠損株に導入すると、プロテアーゼ生産の促進作用が失われた。この事実はProB→DegS→DegUという情報ルートを示唆している。 3.マルチコピーproBのdegR発現への影響をdegR'-'lacZ融合遺伝子を使って調べたところ、degRの発現は抑制される結果が得られた。degRは正の制御因子でありこの結果はProBとDegRの相乗作用と矛盾するが、これについては今後の課題である。
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