研究概要 |
報告者が発見したジベレリン(GA)を生産する新しい小房子嚢菌Phaeosphaeria sp. L487を用いて,高価かつ入手困難なGA_1等の大量生産法をファーメンター培養により検討し,その実用的な製造法の基礎的データをえること,及び本菌におけるGA生合成系に関与する重要な酵素の性質について調べ,植物との比較生化学的な基礎的知見を得ることを目的に研究を行い,次のような知見をえることができた. 1. 7 ファーメンターを用いたGA_1等の製造に関する基礎的研究では,高GA生産培地であるオートミールとファーマメディア培地で,本菌の菌体の増殖は良好であり,GA_1の量的生産には植物油脂の添加が重要であることが分かった.しかし,GA_1の生産量は坂口フラスコ振盪培養の半分程度しか記録できなかった.坂口フラスコ培養による予備実験で,GA生合成中間体であるカウレンやカウレン酸を添加することを試みたが,GA_1生産の改良を図ることはできなかった.しかし,オートミール培地で微量要素のマンガンを強化することは本菌のGA_1生産に有効であることを見いだした.一方,本菌によるGA_<4/9>の生産では,pHを中性付近に制御したファーメンター培養において,K_2HPO_4でpHを調節した坂口フラスコ振盪培養のGA_<4/9>生産と変わらない良好な結果をえた. 2. 本菌の菌体破砕ホモジネートから調製した超遠心上清液について,標識メバロン酸の代謝実験を行い,カウレンの生成をGC-MS分析で確認した.この結果から本菌のカウレン合成酵素は植物等と同じ(膜酵素ではなく)可溶性酵素と考えられた.しかし,そのGA類への変換等は認められなかった.一方,分子生物学的な手法からの検討も行い,本菌の菌体からRNAを調製した.それを基に植物の遺伝子を参考にGA-C_<20>酸化酵素等の遺伝子をクローニングすることを検討している.
|