ソル-ゲル法による木材の無機質複合化に関するこれまでの研究よりテトラエトキシシラン(TEOS)を用いたSiO_2無機質複合化が、木材の諸物性(寸法安定性、難燃性など)の向上に優れていることを明らかにした。SiO_2無機質複合化木材の機能をさらに向上するために、TEOS/EtOH/酢酸の反応系に亜リン酸トリメチル(TMP)やホウ酸トリメチル(TMB)を添加して得られる多成分(SiO_2-P_2O_5-B_2O_3)系無機質複合化木材について検討を加えた。その結果、得られた複合体は難燃性に優れた性質を有することが明らかになった。しかしながら、(1)複合体中のP_2O_5やB_2O_3ゲルは水により溶脱しやすく、(2)TMPは悪臭を有し作業環境保全の立場から望ましくない。そこで(1)に対しては、パ-フロロアルキル基を有するアルコキシシラン(2-ヘプタフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン;HFOETMOS)を同反応系に少量添加(モル比で1/2000程度)することで、複合体に撥水性を付与することができ、P_2O_5やB_2O_3ゲルの溶脱を大きく改善することが可能となった。さらに、(2)に対しては、ケイ素アルコキシドオリゴマーをTEOSの替わりに用い、これにTMPおよびTMBを加水分解・重縮合させて得たP、B変性ケイ素アルコキシドオリゴマーを出発試薬とすることで作業環境の改善が計られた。さらにこの変性オリゴマーは上記3世分が共有結合し安定なため、これより得られたSiO_2-P_2O_5-B_2O_3ゲルは水に対する溶脱率が低く難燃性にも優れたものであった。また、上記TEOSの反応系にリン系難燃剤と少量のHFOETMOSを添加して調製したSiO_2系無機質複合化木材を数種検討した結果、それらは溶脱性も低く難燃性に優れたものであった。 TiO_2系無機物質複合化木材については、Tiアルコキシド、Tiキレートなどの化合物を出発物質とすることで、TiO_2ゲルが細胞壁内から細胞内腔にまで分布した様々な複合体が調製できた。その中で、TiO_2ゲルが細胞壁内に生成したものが寸法安定性、難燃性などの発現に効果的であり、機能発現にはトポ化学的効果が存在することが明らかとなった。
|