研究概要 |
魚粉代替源を検索した結果,ブリ飼料にも20-30%の大豆油粕,含脂大豆,コーン,グルテンミール,ミートミールおよび粉末麦芽タンパク質を単独に代替配合できることが判明した.また,これらの併用添加によりブリの成長や飼料効率を低下させることなく,魚粉配合量を半減できることが明らかになった.さらに,多くの植物性タンパク質については,アミノ酸組成や消化性とともに抗栄養素(トリプシン インヒビター,フィチン酸,抗原など)が成育低下の主原因であり,その除去や改善により栄養価が向上することも判明した. したがって,魚粉削減飼料を開発する際には,まず代替源のタンパク質含量,アミノ酸組成,抗栄養因子,消化性などを調べる必要がある.抗栄養因子の除去には,加熱,洗浄,精製などが有効であり、それらはタンパク質含量の向上にも役立つことが分かった.また,消化性向上には発酵や加水分解が効果的であった。それらの代替源を適正に配合してアミノ酸バランスを良好に保てば,魚粉飼料に匹敵する栄養価をもつ魚粉削減飼料ができるし,少量のアミノ酸補足により多くの魚粉が削減できることが明らかになった.また,長期飼育によりこれらの飼料が養殖現場でも実用化できることが判明した.今後,これらの処理法や配合組成を検討するとともに,飼料の物性や嗜好性を改善すれば,さらに多量の魚粉を削減できようし,魚粉無配合飼料の開発も夢ではない. 結局,わが国の魚粉生産は低下したが必要量が輸入できる現況では,中短期的には各種代替源の併用配合により,魚粉の減産や高騰に対応できると考えられる。しかし,魚類養殖は世界的に増大傾向にあるので,中長期的には魚粉の不足高騰が予想される。それに対応するためには,長期的視野にたって,今から安価で優秀な代替タンパク質源の開発や栄養価の向上に関する基礎研究を強力に推進する必要がある.
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