研究概要 |
本研究は、肺胞細胞の機能調節におけるサーファクタント・アポ蛋白SP-A,SP-Dが関与する際の分子機構を解明することを目的とし、遂行された。研究成果の概要を報告する。 1.SP-Aは肺胞細胞受容体結合を介してその機能を発現するが、各種生物活性の発現にはそのC末端側糖質結合領域(CRD)が関与していることを示した。SP-AとSP-Dの遺伝子組換えによる各種キメラ体及び特定アミノ酸変異体を用いた検討から、特に197番目Argが脂質結合能を除いたSP-Aの機能、つまり肺胞細胞への受容体結合を介するリン脂質分泌抑制作用及びリポソームの細胞内取込み、リポソーム凝集などの機能発現に重要であることを示した。 SP-AのCRD領域には高親和性Ca^<2+>結合部位があること及びアネキシンIVがSP-AとCa^<2+>依存的に結合することを見いだした。さらに、SP-AのC末端CRD領域とアネキシンIVのC末端領域がCa^<2+>存在下に結合することを示した。また、肺胞胞内ラメラ封入体(サーファクタント細胞内貯蔵部位)をリガンドしたアフィニテイークロマトでCa^<2+>依存的結合を示すアネキシンIII,V,VIIIはラメラ封入体中リン脂質と結合していた。この結果、数種のアネキシンがサーファクタントの細胞内移動及び分泌にリン脂質、SP-Aを介して関与していることが示唆された。 肺病態におけるSP-A,SP-Dの挙動を検討、肺胞蛋白症患者肺洗浄液から分離したSP-Aには高次構造の異常が認められ、この構造変化がSP-Aの肺胞細胞受容体を介する機能の異常を惹起し、本疾患の病態を形成することを明らかにした。
|