研究概要 |
著者の開発した高立体選択的分子内ミカエル反応の更なる発展とその応用面の拡大を期し、一回の化学操作にて分子内で連続的3回のミカエル反応を行わせ一挙に四員環化合物を合成する新化学反応の開発、およびchiral auxiliary存在下での不斉合成を行い新しい合成方法論の確立をはかった。更にこの新反応の有用性を実証するため、上記の成果に基ずき多数の不斉中心の存在と多環性化合物であるため従来の方法では合成が困難な生理活性天然物の高選択的な合成を検討した。 先ず分子内多重ミカエル反応を鍵反応とする検討においては、α,β-不飽和エステル系を有するシクロペンテノン及びシクロヘキセノンを基質として活用し、相当するtricyclo[4.3.0.0^<3.7>]decane,tricyclo[6.3.0.0^<3.9>]undecane及びtricyclo[5.2.1.0^<1.5>]decane(A)系化合物を立体選択的に、しかも好収率で合成する反応を開発し得た。なお、これらの系を有する化合物は他の化学的手段では極めて合成し難い。次いでAを利用し、セスキテルペンの一種cedranediolの全合成を完成した。その他分子内二重ミカエル反応による不斉合成も試みたが、最高の光学純度は59%であり、現在のところ満足する結果は得られていない。 生理活性天然物の合成に際しては現在最も注目を集めている抗ガン性ジテルペン・タキソ-ルをtargetとし、分子内アルドール反応及び連続ラジカル環化反応による接近を試みた、前者の反応でタキサン骨格のBC環部を、後者の反応を鍵反応とすることによりAB環部をそれぞれ合成することができた。
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