我々は異常アミノ酸を含む特に海洋生物由来のペプチドが、著しい生理活性を有する点に着目して、これらペプチドの化学構造と生物機能の相関の解明と生物機能発現構造の特定化を目的として、この10年来異常アミノ酸を含有する生理活性ペプチドの効率的構築法を研究している。本研究では、上記の研究の一環として、海洋あるいは淡水に棲息する動植物あるいは細菌に由来するペプチドに焦点をあて、これらを構成する異常アミノ酸の簡便かつ効率的な構築法を開発すると同時に、我々が開発に成功したペプチド結合形成試薬ジフェニルリン酸アジド(C_6H_5O)_2P (O) N_3ならびにジエチルリン酸シアニド(C_2H_5O)_2P (O) CNを用い、あるいはペンタフルオロフェニルジフェニルホスフィナ-ト(C_6H_5)_2P (O) OC_6F_5を活用して、これら異常アミノ酸含有生理活性ペプチドの大量合成に適用可能な効率的合成法を確立した。具体的にはドラスタチン10、マイクロギニン、ジャスパマイド、ジオダイアモライド、サイクロセオナマイドB、アルテロバクチンA、ラヂオスミンなどを合成した。但しテオネラマイドFに関しては南北両半球のそれぞれの合成に成功したが、全体の合成に関しては今後の検討に待つこととなり、マイクロスクレロダ-ミンの合成は取り掛かったばかりである。ここに我々が確立した方法によってこれらペプチドを量産すれば、これらペプチドの生理活性が詳細に調べられ、また同様方法を用いて類縁体の合成が可能となり、化学構造と生理活性の相関研究を通じて、新規医薬の開発も夢ではなかろう。
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