研究概要 |
生体内では各部位、各細胞内オルガネラで活性酸素種が普遍的に生成し、それにより酸素毒性が発現することが知られている。本研究はこの酸素毒性の本体であるスーパーオキシドを効率よく消去する活性(SOD活性)を持つ新規金属錯体の開発・合成を行ない、それらの医薬品への応用の基礎を固めることを目的としている。そして本研究の特徴としてat randamなスクリーニングによる活性物質の探索ではなく、反応機構の解析に基づいてドラッグデザインを行う点,また、開発したSOD機能を持つ錯体を実用的医薬品,具体的には抗炎症薬などに応用する点が挙げられる。 このような観点の下、平成6年度に新規化合物を含む20数種の配位子およびそれに対応する金属錯体を合成した。その活性を測定した結果(1)Fe-TPENが高いSOD活性を持つこと.(2)Fe-TPENのSOD活性は大腸菌細胞内でも発現すること.(3)その結果パラコート毒を軽減すること.(4)活性発現にはエクアトリアル位のピリジン環配位子の置換活性が本質的に重要なこと.(5)その置換活性を有するようにするためには錯体に歪みを与えることが必要であること.(6)II価鉄錯体が空気中で安定であるためには六配位構造をとらねばならないこと.などの知見を得た。そしてこれらの知見に基づいて全く新しいSOD活性を有するFe-6Me TPTN錯体を創製した。この錯体はFe-TPEN類と同様、スピンクロスオーバー錯体であり、スピンクロスオーバー錯体とSOD活性錯体の相関が示唆された。 更に実用的使用を目的に細胞内でのSOD活性を測定するAssay法として96穴のプレートを用いて行う方法も新たに開発した。この方法を用いることにより,多量のサンプル数あるいは各種抗酸化剤との組み合わせなどの一斉分析が可能となり、簡便な薬理活性物質探索システムとして期待できる。
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