研究概要 |
本研究は酸素毒性の本体であるスーパーオキシドを効率よく消去する活性(SOD活性)を持つ新規金属錯体の開発・合成を行い,それらを医薬品へ応用することを目的としている.スーパーオキシドをはじめとする活性酸素種が,炎症・老化・虚血再還流障害・発癌等様々な疾病と関連していることが明らかにされてきており,SOD酵素そのものを医薬品として応用する試みもなされているが,(1)タンパクであるため細胞膜を通過できない,(2)血中半減期が短い,(3)抗体産生能を有する,などの欠点があり実用化には至っていない.そしてこれらの欠点を克服したSOD様の活性を持った低分子化合物の開発が望まれていた.本研究では世界で初めてSOD活性を有する化合物(Fe-TPENおよびその誘導体)の開発に成功し,その有用性をパラコート毒性の防御効果で評価し,ビタミンCとの併用によりパラコート毒性を完全に抑制出来ることは明らかにした.今年度が最終年度であるが,今年度の成果を以下に示す. ・SOD活性発現には置換活性錯体であることが重要. ・錯体の酸化還元電位とSOD活性との間には負の相関がある.すなわち,酸化還元電位が低くなると活性が上昇し,酸化還元電位が高くなると活性が低下する. ・鉄に配位しているメチル基は立体的影響よりむしろ電子的影響によりSOD活性を変化させるが,酸素に対する安定化については立体的効果が大きく作用している. これらの知見はこれらのSOD類を医薬品に応用する際に重要であり,得られたデータに基づいて動物実験にはいることが可能となった.
|