研究概要 |
ごく最近、長年の懸案であったオピオイドレセプターのクローニングがついに実現し、δ,κ,μのオピオイドレセプター・サブタイプの一次構造が明らかにされた。各サブタイプには、それぞれ固有のオピオイドリガンドが存在する事実から、その薬物受容構造の解析が次の重要課題となる。本研究は、我々が開発した最先端の光アフィニティーラベル法を適用し、オピオイドレセプターの薬物受容部位解析を検討するものである。ラベル基に使用する光反応基の選択はラベルの成否を左右する重要因子である。このため本年度はまず、オピオイドレセプターの光ラベル試薬で従来用いられてきたアジドを、光反応性やラベルの安定性でより優れるジアジリンにおきかえるため、ジアジリニル安息香酸の合成を検討した。我々の開発したタリウム化を経る方法により、合成容易な既知のフェニルジアジリンよりパラ及びメタージアジリニル安息香酸を容易に得ることに成功した。ジアジリン構造は大きさの点でアジドに近いので、既にレセプターへの親和性が確認されているアジド型試薬の例を参考に、ナルトレキソン骨格にこれら二種の光反応基を導入した。δ,κ,及びμのそれぞれのレセプターに対し合成試薬の結合実験を行ったところ、きたいどうりいずれも高い親和性を示した。ジアジリンの置換位置に関する異性体であるこれらの試薬は、ラベルを形成する反応性中間体カルベンの発生位置が異なるので結合部位の微細な解析が可能と期待される。また、天然より新規オピオイドリガンドを見いだすため、微生物代謝成分の解析を積極的に推進した。さらに、ラベル部位の解析を効率的に進めるため、アビジン-ビオチン系が利用可能なビオチン化ジアジリンの新規開発にも成功した。本年度は初年度として以上のような新型アフィニティープローブの合成を中心に検討し、本研究の初期目標を達成した。
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