研究概要 |
【研究目的】オピオイドレセプターのクローニング成功により、レセプター研究を分子レベルで追及するうえで強力な手段が提供された。この結果、キメラレセプター・部位特異的突然変異などの遺伝子の手法を用いる機能構造解析が可能となり、レセプターの薬物受容部位に関する知見が集積されつつある。一方次の段階として、遺伝子操作によって得られるミュータントレセプターの解析に基づく結果を、もとのレセプター蛋白質で検証する研究が極めて重要となるが、この目的に光アフィニティーラベルは現在最も有力な手段の一つである。本研究は、我々の開発した最先端の光アフィニティーラベル法により、オピオイドレセプターの薬物受容部位解析を追求するものである。 【平成7年度の研究成果】前年度に合成したカルベン発生型のナルトレキソン誘導体はオピオイドレセプター蛋白質への親和性に優れ、目的とする光アフィニティーラベル試薬のプロトタイプとして十分の性能を有するものであった。しかし、実際に実験を進めるうえでは微量のラベル生成物を高感度に検出する工夫が必要となる。従来の、放射性標識体を用いる方法に変え、我々が最近開発したアビジン-ビオチン系をを利用する非放射性の高感度検出法による新しいアプローチを検討した。ビオチン化ジアジリンをナルトレキソンに導入して合成した新規プローブは、δ,κ,及びμのいずれのレセプターに対しも期待どおり高い親和性を示すことを確認した。さらにこの特徴を生かし各サブタイプを単一に発現する実験系を用いる方針で、まずNG108-15培養細胞によるδ-レセプターの解析に着手した。また、天然より新規オピオイドリガンドを見いだすため、微生物代謝成分の解析を積極的に推進した。本年度は以上のようにビオチン基を有する実用型光アフィニティープローブの合成を中心に検討し、本研究の本年度目標を達成した。
|