【研究目的】オピオイドレセプターのクローニング成功により、キメラレセプター・部位特異的突然変異などの遺伝子工学的手法を用いて、オピオイドの受容部位に関する構造生物学的知見が集積されつつある。本研究は、次の重要段階として、このようなミュータントの解析結果を本来のレセプター蛋白質で検証するため、我々の最新の光アフィニティーラベル法を応用し、オピオイドレセプターの薬物受容部位の化学的解析を追求する。 【平成6年度】まず、ラベル試薬の基本構造となる試薬の合成とその性質を検討した。以下に示すナルトレキソン骨格にジアジリンを導入した試薬を合成し、基本型となるカルベン発生型のオピオイドリガンド2種を調製した。μ及びκレセプターへの親和性は、いずれも10^<-9>-10^<-10>Mの非常に良い値を示した。 【平成7年度】前年度の結果をもとに、ナルトレキソン骨格にビオチン化ジアジリンを導入し、ラベル検出に化学発光系が利用できるカルベン発生型の新しいオピオイドリガンドを調製した。さらに、実際のレセプター蛋白質として、ラット及びモルモットの脳から調製した膜片を用いてμ、δ、及びκレセプターへの親和性を測定した。これらの結合活性評価の結果、各レセプターへの親和性は約1-0.1nMといずれも優れていた。 【平成8年度】合成したラベル試薬はμ、δ、及びκレセプターのいずれも親和性を有するので、レセプタータイプ間で共通するオピオイド結合部位の解析に有用と考えられる。この目的に、NG108-15培養細胞およびリコンビナントデルタレセプターの光ラベルを検討し、その特異的ラベルに成功した。以上のようにビオチン基を有する実用型光アフィニティープローブの開発と応用を中心に検討し、本研究の当初目標をほぼ達成した。
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