魚粉と小麦を原料に焼酎用、鰹節用、醤油用、清酒用麹菌を、または、魚粉と米を原料に鰹節用麹菌をそれぞれ加えて発酵させて調製した5種類の魚醤油諸味および大豆と小麦に醤油用麹菌を加えて調製した大豆醤油用諸味を、それぞれ1〜6ケ月熟成させた後、絞って得られた生醤油を試料とし以下の分析を行った。行った分析項目は、色調変化、還元糖量、アミノ基量、ポリフェノール量、ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)活性についてである。 実験結果をまとめると以下のようになる。各醤油とも熟成に伴い色調が濃くなったが、大豆醤油が最も着色した。還元糖は熟成1〜2ケ月の間で有意に減少した後、一定となった。アミノ基は大豆醤油に多く含まれていたが、熟成中の変化は一様ではなかった。加熱によって色調は約4倍濃くなったが、両成分に有意な変化は見られなかった。また、原料に米を用いることにより、糖の減少量が低下し、熟成および加熱による着色が抑えられた。一方、PPO活性はわずかながら認められ、熟成に伴い活性が低下した。各醤油を比較すると、魚粉・小麦に醤油用麹を加えたもので熟成1ケ月での活性が最も高く、熟成に伴う活性低下も大きかった。大豆醤油では、比較的高い活性が6ケ月間保持された。PPOの基質となるフェノール類は大豆醤油に多く存在したが、魚醤油にもフェノール類は存在した。醤油製造時、諸味を絞ると急激に着色することが観察された。これは、アミノ-カルボニル反応の中間体が酸素に触れ重合するためと思われるが、絞ったときの色調変化はかなり速く、この反応以外の褐変化反応も起こっていると考えられる。熟成期間が6ケ月経過した後もPPO活性はいずれの醤油にも残っており、絞る段階で酸素に触れ、存在するフェノールに作用し着色に関与する可能性が示唆された。
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