研究概要 |
本年度の目的は,本邦日本海岸産の軟体動物化石の採取・ESR年代測定・アミノ酸分析とそれに基づく環境解析であった。 試料については,秋田県男鹿半島および石川県能登半島の中・後期更新統と目される海成層から軟体動物化石を採取した。これらの試料を2分し,ESR年代測定とアミノ酸分析を施した。両試料からのESR信号は三浦半島のサンゴ化石以外の資料については十分に受信でき,ESR年代は10万年〜20万年にわたることが判明した。アミノ酸分析では,有効なイソロイシンのラセミ化の程度は男鹿の試料の方が能登半島の同時代の試料よりも小さく,最近20万年間では緯度的に北にある常磐海岸の方が化石の続成過程において化学的反応(ラセミ化)が遅く進行したてきたことが明らかとなった。また,アミノ酸分析値を年代順に並べてみると,少なくとも第四紀後期ではイソロイシンのラセミ化の速度は一様であったことが判明した。
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