研究課題
2年度目に当たる本年度では、南極北極、アジア高山地域で採取された氷コアの分析を実施、化学物質濃度の時間変化を解析するとともに、化学物質濃度の季節濃度による年代の推定と他の主暖による年代の推定との比較を行った。その結果、1、融解が全く生じない南極の試料の場合でも、化学物質によっては時間とともに変質が生じることが明らかとなった。最も特徴的なのは硝酸であり、氷床表面の積雪層内において光による変質を受けてしまう。しかし、物質を選べば(たとえば硫酸)、充分年代の推定を行うことが可能である。2、北極の試料では、堆積量が少ない場合や風による吹き払い効果によって冬の層が欠落するような場合には、同位体を用いて年代推定することが困難である。しかし、その場合でも、イオン濃度には季節変動が残っており、そのことを用いて年層の決定が可能である。3、融解現象が生じるアジア高山域の試料の場合には、要素によっては季節変動が明瞭でなくなる場合も生じるが、複数の要素を総合的に利用することによって年代を決定することが可能である。ただし、充分な分解能をもって各要素の深さ分布を復元することが肝要である。ということが明らかとなった。