研究概要 |
廃棄物処分場の浸出水の実態を解明するために、前年に引き続き、調査をおこなった。本年度の調査のうち、重金属については、これまでの測定でしばしば見られた浸出水中マトリックス成分の干渉の影響を抑えるため、かなりの元素の分析について、ICP発光分析装置を用いた。また、これまで測定が不可能であって、かつ浸出水にmg/Lオーダーで含まれるB(ホウ素)についての知見を得ることもできた。重金属の形態別分析では、Cr,Cu,As,Pb,Seについて、イオンクロマト-ICP質量分析法による形態別分析方法を開発しイオン形態までを含めた詳細な検討を行った。 重金属の凝集過程での挙動を詳細に調べた。浸出水中重金属処理の主たる過程である凝集によって、重金属は十分に除去されないことがわかった。浸出水の処理プロセスでは、有機物の除去を目的とした酸性凝集が一般に行われており、もし、これをアルカリ性で行えば、有機物の除去の点ではマイナスであっても重金属をより除去できるかどうか実験した。しかし、浸出水の凝集では、純粋物質の凝集の場合と異なりアルカリ下では重金属が凝集しなかった。その理由を調べるために、重金属の溶解度を計算したところ、多くの金属についてpHの高い領域を含めて、アンモニア錯体、塩化物錯体の影響を加えると、溶解度は、0.5mg/L以上となり、pHの上昇のみによって沈澱を生成させることは浸出水については不可能であることがわかった。また、浸出水中の重金属(特にCuとNi)は、有機物に結合して存在しており、有機物が除去されない限り、除去されないことがわかった。ナノろ過法の実験も行った。ナノろ過法は、錯イオンの除去等も良好に行えることが考えられ、無害な塩類を十分に透過させる膜であっても重金属を阻止することが可能であった。 微量有害有機物の分析では、水/オクタノール分配比の大きい疎水性の化合物ほど長期間処分場から検出されること、トリハロメタン生成能が、浸出水処理の酸化過程で増大することなどが明らかになった。
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