研究概要 |
1)2段処理装置による廃液処理の基礎実験では,上部に嫌気性ろ床を設け,処理水環流を行わない方式を導入することにより,明らかに装置下部での自己造粒化を促進させる効果が認められた。また,自己造粒後も安定した汚泥濃度が維持され,TOCは下部で80〜85%,上部で10〜20%除去された。意図的に撹拌を行わなかったこの装置では,反応器下部において酸発酵菌とメタン発酵菌との棲み分けが行われ,二相嫌気消化の自己造粒プロセスが構築された。 2)高塩類・高濃度有機性廃液処理の研究では,装置のスタートアップ段階において塩分希釈馴致を行った結果,塩分存在下での離分解性のスルファニルアミンの分解が可能となり,1段目で酢酸を分解させ,2段目でのスルファニルアミンを分解させる2段生物膜法が実用化できることが明らかとなった。 3)膜分離高濃度活性汚泥法では,オゾンによる離分解性物質の易分解性物質への変換が実証でき,3段処理による写真廃液処理の実用化の基礎が確立できた。 平成6年度の研究計画に対してほぼ満足できる成果が得られた。特に2段処理装置において上部に嫌気性ろ床を設け,処理水環流を行わない方式を考案・採用したことにより,自己造粒化の促進,酸発酵菌とメタン発酵菌との棲み分け,および処理効率の向上がみとめられ,今後の自己造粒法による排水処理の発展方向に有用な示唆を与えたと考えられる。また,高塩類・高濃度有機性廃液や写真廃液の陸上処理への道が開け,海洋投棄の廃止にともなう対応技術の基礎が確立できた。今後は,これらの実験を継続するとともに,本処理方式をスケールアップした場合の問題点の解決や経済性等の評価を行っていく予定である。
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