アポ酵素機能を持つ触媒系はレセプター分子が触媒基と基質を適切な位置に集積させることができ、かつ触媒基、基質の活性化や遷移状態の安定化できることが望ましい、フラビンレセプターの開発を目指して、種々のグアニジニウムイオンを有するメラミン誘導体を合成し、フラビン類とのクロロホルム中での会合定数を測定した。今年度特にイソアロキサジン環への水素結合による反応性制御に焦点を当て、フラビンの酸化活性に及ぼすレセプター分子の水素結合の効果を速度論的に検討した。その結果、イソアロキサジン環N(1)-位への水素結合はN(5)-位を攻撃して進行する反応を加速すること、N(5)-位への水素結合はC(4a)-位を攻撃して進行する反応を加速することを見出した。この結果はレセプター分子を添加することにより、フラビンの反応性が制御されたはじめての例で今後の触媒系設計の重要な指針となる。またグアニジニウムイオンをもつメラミン誘導体たFMNを特異的に認識することを見出した。即ち水溶性のFMNをこのレセプターを用いるとクロロホルム層に抽出できるが、リボフラビンは抽出できない、これはイソアロキサジン環ウラシル部位とリン酸部位への水素結合による分子錯体は疎水性であるためである。単離した分子錯体の組成はNMRよりFMN:レセプター比は1:1であった。更に他の触媒系への拡張としてチミン部を持つチアゾリウムイオンによるピルビン酸の酸化的脱炭酸に及ぼす上記レセブターの効果を検討した結果、グニニジウムイオンはピルビン酸アニオンのカルボニル部位に水素結合するために、レセプター添加による大きな加速効果が見られた。
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