研究概要 |
反応に有利に働く因子を適切な位置に配置できる分子はアポたんぱく機能を有する分子であり、人工酵素構築の重要な要素の一つである。フラビン酵素では、補酵素、基質、加速因子が非共有結合で活性中心に集積されて触媒機能が発揮される。われわれはアポ酵素モデルとして機能性フラビンレセプター分子を開発し、高酸化活性フラビンの反応部位近傍に非共有結合で機能因子を集積する系が人工フラビン酵素構築の基本戦略とした。チミンレセプターである2、6-ジアミノピリジン誘導体はイソアロキサジン環のウラシル部位と三重水素結合しフラビンレセプターになることを見出したが、会合定数が小さいため反応条件での錯形成率が低く、アポ酵素モデルとしては限界がある。会合定数をあげるため水素結合の数を増やしたレセプターとしてグアニジニウムイオンを持つメラミン誘導体を開発した。高酸化活性フラビンである6-ザフラビンと5重水素結合が可能なため会合定数は著しく向上した(140, 000M^<-1>、クロロホルム中)。このレセプター分子を用いて、フラビンの反応性は水素結合によって制御されることを見出した。即ち、N (1)-位に水素家合する場合はN (5)-位を攻撃する反応を促進し、N (5)-位への水素結合はC (4a)-位を攻撃する反応を加速することを見出した。更にチミン部をもつチアゾリウム触媒によるピルビン酸の酸化的脱炭酸の反応に応用すると、グアニジニウム部位は基質引き寄せとカルボニル基への求核攻撃を酸触媒として助け、このレセプター分子はアポ酵素モデルとなることを見出した。
|