研究概要 |
糖転移酵素における糖転移機構の解明と新しい機能性擬似オリゴ糖の創製を目的として、ガラクトース転移酵素およびシアリル転移酵素に対する新しい供与体アナログを設計・合成し、それらの糖転移酵素に対する挙動を明らかにした。5-チオアルドースを含むオリゴ糖が酵素阻害作用を示したり、レクチンに対して強い親和力を示すことはすでに化学合成した擬似オリゴ糖を用いて明らかにした。今年度は5-チオアルドースを含むオリゴ糖の酵素合成を検討すべく、5-チオアルドースから成る糖ヌクレオチド(Leloir)供与体UDP-5-チオ-D-ガラクトサミン 1,GDP-5-チオ-L-フコース2,GDP-5-チオ-D-マンノース3などを合成した。1および2はそれぞれラクトアルブミン存在下におけるβ-1,4-ガラクトース転移酵素およびα-1,2-フコース転移酵素により、GlcNAcおよびGalに相当する5-チオ糖残基が転移されることを明らかにし、新しい酵素合成の可能性を切り拓いた。シアル酸転移酵素の供与体であるCMP-シアル酸のアナログとして、すでにシアリルホスホン酸型アナログについては合成法を確立しているが、今年度はシアリルメチルホスホン酸型アナログ5,そのα-アノマーアナログ6およびα-ヒドロキシアナログ7を合成した。これらのアナログについてシアル酸転移酵素の阻害活性を測定し、そのうちの1種がとくに強い活性をもつとは言えないが、CMPに匹敵する阻害活性を示すことを明らかにした。また、アナログについては転移速度はCMP-シアル酸の0.8%程度であるが、供与体として働くという興味ある事実を見いだした。さらに、CMP-シアル酸輸送タンパク質性挙動についても検討し、アナログ6がこのタンパク質の機能を阻害することを見いだした。これらの知見はシアル酸の生化学に新しい展開をもたらすものと期待される。
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