研究概要 |
電位依存性は生体膜のイオン流束を制御する主要なゲート機能である.これは一般的に膜内に取り込まれたイオン性基が膜電位に応答する機構で説明されている.そこで極めて単純なアプローチとしてオリゴエーテル基リン酸と疎水性長鎖4級アンモニウムと組み合わせるて,全体としてアニオン電荷の数がカチオン電荷数を上回るイオン対を用いた。また同様にオリゴエーテルアンモニウムと疎水性リン酸と組み合わせた。これらは従来のカルボン酸-アンモニウムとの組み合わせと異なり,電位に依存してチャネルの開閉時間が変化した。これは膜に取り込まれた電荷の数が脂質2分子膜間で異なるため,膜を介してマクロ双極子が形成され,これが膜電位との相互作用により,開閉に影響を及ぼす機構により説明され,膜に電荷を取り込ませるという極めて単純な仕掛けだけで電位依存性機能が発現できることを見いだした。 一方,チャネル分子に光感受性ゲート機能を付与するため,疎水性2本鎖4級アンモニウムの長鎖アルキル基の一方に光によるシス-トランス異性化の可能なアゾベンゼン基を導入し,これをオリゴエーテルカルボン酸とを組み合わせたイオン対を用いた。このイオン対はトランス体を用いた時には3pSから15pSまでの複数の電導度を有する超分子イオンチャネルを形成したが,紫外光照射により異性化させたシス-アゾ基に変換した後はシングルチャネル電流は観測出来なくなった。しかし本化合物を可視光照射により再びトランス体に戻すとイオンチャネル電流が回復することが認められ,光刺激による構造変化によってチャネルのゲートを開閉する人工的な機能の付与に成功した。
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