研究課題/領域番号 |
06453216
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
国武 豊喜 九州大学, 工学部, 教授 (40037734)
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研究分担者 |
石川 雄一 大分大学, 工学部, 助教授 (30184500)
浜地 格 九州大学, 工学部, 助教授 (90202259)
君塚 信夫 九州大学, 工学部, 助教授 (90186304)
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キーワード | 合成二分子膜 / ヘム蛋白質 / ミオグロビン / 配向組織化 / チトクロムc / N-デメチラーゼ活性 / 蛋白の機能変換 |
研究概要 |
我々は既に、水溶性のヘム蛋白質であるミオグロビンが、合成二分子膜上で二次元的に、しかも特定の配向で組織化されることを報告している。また、ミオグロビンのヘムにアルキル長鎖(アンカー)を修飾し、再構成して得たアンカーミオグロビンは膜に対して特異的配向を示すのみならず、膜親和性の向上も認められ、膜結合蛋白の性質を強く帯びた蛋白に変換されることを明らかにしている。本年度はこれらの基礎に立ち、(1)二分子膜による蛋白の組織化様式の拡張、(2)蛋白機能の能動因子としての二分子膜の作用、の二点について検討した。 (1)では、糖残基を親水部に有する二分子膜の合成を行い、糖と特異的結合するフェニルホウ酸部位を持つ再構成ミオグロビンと複合化させた。合成糖脂質をマトリックスに加えると、ミオグロビンの膜結合性は大きく上昇し、フェニルホウ酸部位を糖でブロックして行った阻害実験では結合しなかった。これにより、二分子膜とミオグロビンの結合に糖-フェニルホウ酸が関与していることは明らかであり、糖の認識能を含めることにより複合膜の組織化様式の拡張に成功した。 (2)では、アニオン性リン酸型合成二分子膜に結合したヘム蛋白のチトクロムcでは、o-メトキシフェノールのテトラグアヤコールへの酸化触媒機能が大きく増幅され、また、N,N-ジメチルアニリンを基質とするN-デメチラーゼ活性も膜結合チトクロムcにおいて大きく増幅された。これは、膜結合によるチトクロムcのヘムに軸配位したメチオニン残基の解離によって活性増幅したものと考えられ、膜は蛋白に対して能動的に作用することを示している。 以上のように、合成二分子膜による蛋白の組織化ならびに合成二分子膜を蛋白の潜在機能の発現に対し能動因子として適用させる方法は、バイオエンジニアリングの視点からも有意義なアプローチであると考えられる。
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