研究概要 |
(1)生物界に広くみられる発光現象の反応の分子機構で中枢的役割を果たしている酵素ルシフェラーゼについては、これまでその三次元立体構造は明らかにされていない.また,ある種の発光細菌において,ルシフェラーゼがコードされているLuxオペロンに,その機能が不明なフラビンタンパク質(FP390)の遺伝子(luxF)が存在し,このEP390はルシフェラーゼβサブユニットとの相同性が高い.本研究では,発光細菌Photobacterium phosphoreum由来のルシフェラーゼおよびFP390を対象としてX線結晶解析を行い,それぞれの三次元構造を決定することを目的としている。 (2)ルシフェラーゼについては,結晶化の予備実験によって微結晶が得られていたので,X線構造解析に適する大きさの結晶を得るために,多種類の沈殿剤を用いることなどを含めた結晶化条件の精密化を行った.この結晶化条件の検討は,補欠因子を含まないアポ酵素,FMNを補欠分子として含むホロ酵素,酵素-基質生成物複合体について行ったが,現在のところ,X線構造解析に用いるに十分な結晶は得られておらず,条件検索の継続が必要である. (3)これまですでに良好な結晶の得られているFP390については,シンクロトロン放射光を用いて測定した3Å分解能の回折データに基づいて,分子置換法を適用することによって結晶構造の解析に成功した.得られた初期的な結晶構造の結晶学的精密化を行い,R値23%の構造を得た.この結果,構造は一分子あたり2分子のフラビンを結合して,二重体として存在することがわかった.しかしながら,現在の回折強度データの質は必ずしも十分でなく,フラビンの詳細な構造,結合様式についての情報が得られないので,分解能の向上をも含めた回折データ再測定を行うことが必要であると考えている.
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