研究概要 |
接合伝達は、細菌細胞種内、種間の遺伝物質の移行に関与しており、細菌における遺伝物質の交換ひいては進化を考察する上で重要な過程である。我々はすでに、R64の接合伝達領域(54kb)の全塩基配列を決定し、49個のORFの存在を確認している。各遺伝子の機能を解明するため、49個の全遺伝子に挿入または欠失変異を導入して接合伝達に対する影響を調べた。その結果、表面接合伝達には23個の遺伝子が必須であり、液内接合伝達にはさらに12個の遺伝子が要求されることが明らかになった。液内接合伝達にのみ要求される12遺伝子はR64の細線毛をコードしていたので、R64誘導プラスミドを持つ大腸菌から細線毛を精製した。精製細線毛には48,21kDaの2種のタンパクが検出された。48kDaタンパクは、抗PilV抗体と反応し、pilV遺伝子の産物であると推定された。21kDaのタンパクはpilS遺伝子の産物で、細線毛の主成分-ピリン-である。以上の結果、シャフロンのDNA再編成は、細線毛の構成成分をコードするpilV遺伝子のC-末端部を変換させることにより、液内接合伝達における受容菌の特異性を決定すると結論した。また、pilS遺伝子産物は23kDaタンパクとして合成され、pilU遺伝子産物の作用により21kDaタンパクにプロセスされると推定した。oriTオペロンに関してはnikA遺伝子の各種変異株を作成して、oriTとの相互作用を解析した結果、nikA遺伝子内のDNA総合ドメインを推定した。また、oriT配列に各種変異を導入し、oriT活性とNikAタンパク結合とに及ぼす影響を調べた。rci遺伝子に関しては、多数の変異株を作成して構造と機能の関係を調べるとともに、T7プロモーター系を用いた大量発現系の作成に成功した。なお、備品として購入したローターは細線毛の精製に使用した。
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