研究概要 |
接合伝達は、細菌細胞種内、種間の遺伝物質の移行に関与しており、細菌における遺伝物質の交換ひいては進化を考察する上で重要な過程である。R64の接合伝達領域(54kb)には49個の遺伝子の存在するが、その機能を解明するため、全遺伝子に挿入または欠失変異を導入して接合伝達に対する影響を調べた。その結果、表面接合伝達には24個の遺伝子が必須であり、液内接合伝達にはさらに12個の遺伝子が要求されることが明らかになった。液内接合伝達にのみ要求される12遺伝子はR64細線毛の産生に関与している。細線毛のタンパク成分を電気泳動で調べた結果、細線毛はpilS,PilV遺伝子産物から構成されていることが明らかになり、pilS,pilVの構造から、R64細線毛がIV型線毛に属することが推定された。PCR法で多数のpilS突然変異を分離しpilS遺伝子産物の構造と機能の関係を調べた。またpilQ遺伝子を大量に発現させ、その産物を精製した。現在その抗体を作成中である。R64では、シャフロンのDNA再編成でpilV遺伝子のC-末端部を変換させ、液内接合伝達における受容菌の特異性を決定する。受容菌にはpilVタンパクに対する受容体が想定される。大腸菌K-12株rfa変異株を受容菌とした実験や、大腸菌B株にK-12株由来のrfa遺伝子を導入して受容菌とした実験から、pilV受容体は細菌のリポ多糖であると推定された。シャフロンの組換え酵素をコードするrci遺伝子を大量発現させ、その産物を精製した。シャフロン部位を持つプラスミドDNAを基質とし、精製Rciタンパクを用いて、試験管内でのDNA組換え反応に成功した。2個のoriT配列を直列に持つプラスミドを作成し、可動化実験を行ったところ、プラスミドの伝達によるoriT配列間を欠失する組換え現象が発見された。さらに供与菌中でのnikeAB遺伝子に依存した、伝達によらない欠失も認められた。
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