以下の研究成果が得られた。 (1)ホットスポットにおける組換え促進因子は、遺伝的に優勢に働くという結論が導き出された。また、wm7ハプロタイプはヘテロ接合の相手のMHCハプロタイプによりLmp2ホットスポットでの組換え率が異なること、また、クラスIIEa遺伝子からクラスIII補体領域での高頻度組換えを見出した。 (2)組換え率がマウスの交配相手に依存することを明らかにした。ホットスポットでの組扱え率は交配に用いた親系統のLmp2ホットスポット間の塩基配列の相同性の程度に依存していることを明らかにした。さらに、挿入や欠失はホットスポットにおける組換えを阻害するが、点突然変異は組換えを阻害しないことを示した。 (3)MHCクラスIII領域での組換えも交配に用いたMHCハブロタイプに依存して不均等に起こることを明らかにした。このように、免疫反応とは無関係の非多型的な遺伝子からなる領域にも組換えのホットスポットが存在することを示し、組換えのホットスポットが染色体上で普遍的な現象である可能性を示した。 (4)クロマチン高次構造がLmp2ホットスポットで組換えを起こすことと直接的に関係していないことが明らかとなった。これらの解析結果は、酵母の結果と大きく違っており、単細胞生物である酵母と多細胞生物である哺乳類とでは減数分裂期における組換え機構が異っていることが示唆された。 (5)Pbホットスポットの塩基配列を決定した。この結果、マウスMHC領域内の4つのホットスポットの全ては、例外無く遺伝子の3'側か若しくはイントロン内にあることが明らかになった。この結果は、酵母のホットスポットが、遺伝子の5'側に存在し、転写開始点とオーバーラップすることと著しい対照をなしている。また、この事実は、ホットスポット部位が、必ずしもオープンなクロマチン構造を取っているとは限らないこととも関連し、ホットスポットの位置を決定している機構に酵母とマウスの減数分裂では決定的な違いが存在するものと考えられる。
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