研究概要 |
植物群落の多種共存の機構を明らかにすることを目的につぎの(1)-(4)に焦点をあてて研究を行った. (1)個葉の光-光合成曲線は優占種と従属種とでどのような差があるか.(2)その差は個葉の構造的特性と光合成に関与するクロロフィルとタンパク量の差でどこまで説明できるか.(3)異なった光環境を利用するうえで,両種の個葉レベルのN利用効率はどこまで最適化されているか.(4)優占種と従属種は群落全体の生産システムにどのように寄与するか. 本年度は宮城県川渡ススキ草原・釜房湖畔オオオナモミ群落において以下の調査研究を行った.(1)層別刈取り法により,群落構成種ごとにバイオマス現存量・葉面積分布を測定し,これと群落内の光分布の測定とから,構成種ごとに吸収する光フラックスを計算した.群落構成種の光捕捉効率を比較し,これを生育期間全体で評価するとほぼ一定であることが示された.(2)層別刈取り法によって得た上記試料のN分析をおこない,Nが構成種の間でどのように分割されているかを調べた同じ光環境下でも,葉面積あたりのN濃度は種によって異なっていることが示された.(3)構成種ごとに個葉の光-光合成曲線を測定し,葉のN濃度を分析し,個葉光合成をモデル化した.光飽和光合成速度と葉面積あたりのN濃度の関係は種によって異なっていることが明かになった.(4)可溶性タンパク質・Rubisco・クロロフィル・電子伝達活性を測定することにより,構成種の個葉の光合成能力を光合成各反応系への有限なNの分配様式により解析する.種間の光合成能力の差は各反応系へのNの分配様式の差により説明できることが示唆された.
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