今年度の研究実績は、つぎのようにまとめられる。 (1)予備的な現地調査の結果、東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター周辺の浅海域の砂質底に、食性の異なる3種の線虫類が生息していることを明かになった。それらは、珪藻食性のSymplocostoma spp.、細菌食性のMetachromadora sp.、肉食性のMethacanthion sp.である。これによって、異なる粒径の金コロイドで餌を区別して標識するとう研究計画が実行可能であることが確認できた。 (2)前記の線虫類のうち珪藻食性および細菌食性の2種は、実験室内で人工的に培養し金コロイドを付着させた餌を摂食することを確認した。すなわちこれらの線虫類が金コロイドを忌避しないことを確認し、金コロイドを摂食量測定のためのトレーサーとして用いることが可能なことを明らかにした。 (3)定量的な摂食量測定のための、浅海堆積物試料を用いた予備実験を実施した。この実験で得られた試料を、電子顕微鏡観察およびEDX分析のために調製し、分析を行った。その結果EDXのよる金コロイドの検出が可能で、今後本格的な分析を行える見通しがたった。 (4)平成7年1月に東京大学海洋研究所研究船白鳳丸のKH-94-4次航海において、南太平洋の深海堆積物を採取し、その中に生息する線虫類を用いて、金コロイドを用いた粒状有機物の摂食実験、放射性同位元素を用いた溶存有機物の吸収実験、精密酸素電極を用いた呼吸量測定実験を船上にて実施した。実験試料は2月14日に無事研究所に戻った。これらの試料を分析することが、平成7年度の主要な研究課題である。
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