大型珪藻類(目合い100μmのネットに瀘しとられたものをここでは大型珪藻類と呼ぶ)の試料は、昨年度に引き続き、研究船の白嶺丸(1995年8月から10月)および白鳳丸(1995年10月から11月)の中・西部太平洋航海に参加して、プランクトンネットの鉛直引きおよび大量採水試料のろ過により得た。加えて、白鳳丸では航走中に船底から常時取水し、プランクトンネットで試水中の大型珪藻を濾しとって試料を得た。一部試料は高知県室戸市の海洋深層市研究所で得た。中性ホルマリンで固定したそれぞれの試料中に出現する大型珪藻類の種を研究室に戻ってから光学顕微鏡で観察同定し、さらにその細胞密度と細胞容積から種ごとの生物量を求めた。時・空間的に異なった出現を示した種については、光学顕微鏡観察だけではなく、一部の種については走査型電子顕微鏡により細胞の外部形態の精査で種の同一性を検討した。その結果、精査したAsterolampra marylandicaで空間的に広範囲の分布が確認され、併せて通常種とは異なる狭い分布を示す未記載(手元の文献での確認では)の形態を示す細胞が見つかった。これについては、記載の有無の調査と、新種かどうかについて専門家の意見を聞き検討していく予定である。また、中部北太平洋では植物プランクトン群集内での大型珪藻類の生物量での優占度とその時・空間的な変動特徴が明らかになり、あわせてその特徴的な水平・鉛直分布が把握された。優占度については、細胞の大きさをキャンセルした新しい優占度の概念を提出した。これらの結果の一部は、1996年4月に開催予定の日本海洋学会春季大会で口頭発表の予定である。また、まとまった研究から、今後、随時、英文論文として専門国際誌に発表する準備を進めている。
|