3カ年の研究期間で、中・西部太平洋の北緯50度から、南緯65度までの南北にわたる広い海域で観測と試料採取を行った。中部北太平洋では同一時期の複数年の繰り返しや異なった時期の観測も実施した。今回は細胞もしくは群体の長さや幅が100μm以上の大きさの大型珪藻類を対象としたが、これには種同定がやり易いということだけで特にそれ以外の理由はない。大型珪藻類種は対象海域全域で水柱内に数種から10数種出現し、グループとしての分布の普遍性が確認された。対象海域全域に出現した種はなかったが、南北数千kmの広範囲に出現する種から、出現が数百kmのごく限られた範囲にものまであり、分布は多様であったが、全40種を纏めると6-8のグループに分けられた。個体数出現密度は高緯度海域では数%に達する種がみられたが、その他の海域では10^<-4>以下で稀な存在であることが確認された。対象とする大型珪藻類種は個体数サイズが大きいために、生物量の優占は個体数より大きくなり、高緯度海域では50%以上の優占性を示す種が出たが、その他の海域では10^<-2>以下で稀な存在であった。今回の一連の研究で、大型珪藻類種が個体数ならびに生物量で共に非優占的に存在する海域と期間がかなり広範囲に捉えられた。永久に非優占的な種の特性はまだ把握できていないが、その可能性を持った種がいくつか抽出された。本研究により、今後、非優占戦略の可能性を検討していく足がかりが出来たと考える。
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