研究概要 |
本研究では植物ホルモンとして最も多画的な作用を持つオーキシンで発現が制御される遺伝子群をクローン化しその機能並びに発現制御機構を調べることを目的としている。これまでにparA,parB,parCをタバコ葉肉細胞プロトプラストから、arcAをタバコ培養細胞BY-2からクローン化して解析してきた。本年度は以下のような成果があった。 WD-40repeatと呼ばれる分子内繰り返し構造を有するarcA産物は、様々な生体制御因子を構成員とするGβファミリーに属する。arcAはこのファミリーのなかでも活性化されたCキナーゼと結合することが報告されたラットのRACK1(Ron et al.,1994)等と共にサブファミリーを形成している。昨年度作製したarcA産物に対する抗体を用いてBY-2の培養過程におけるarcAタンパク質の量的な変動を検討した結果、分裂の最も盛んな、植え継ぎ後二日目にarcAタンパク質の蓄積も最大になることが示された。Gβファミリーに属する蛋白質は多くの場合、複合体を形成し機能する。そこで免疫沈降法などでarcA産物と結合するタンパク質の探索を行い、arcA産物と相互作用すると思われるタンパク質を見出した。 parBのオーキシンに関するシス領域をGUSをレポーターとする形質転換タバコの実験系で解析した。その結果5'上流域-210〜-162までの49bpと-374〜-279までの96bpの二つの領域が生理的濃度のオーキシンに独立に応答して遺伝子を活性化できることを示された。しかし合成オリゴヌクレオチドを使ってこれらの領域をさらに短くすると、オーキシンに対する応答は消失した。またAREIに三箇所の点突然変異を導入した場合、いずれもオーキシンに対する応答は失われた。したがってparBのオーキシンによる転写の活性化は6bp程度の単一のモチーフにより制御されているのではなく、ある程度離れて存在する複数のモチーフの協調作用によるものと考えられる。
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