エンドウの葉緑体に存在するDNA結合タンパク質について実験を行い以下の結果を得た。 1。葉緑体には多数のDNA結合タンパク質が存在する。葉緑体を界面活性剤によって可溶化し、遠心分画により核様体画分と可溶画分に分けると、包膜由来の130kDaタンパク質とストロマ由来の175kDaタンパク質が可溶画分に回収された。核様体画分には、多数のDNA結合タンパク質が含まれたが、主要なものの分子量は、110、105、85、80、60、40kDaであった。これらのうちで、175、110、80、40kDaのタンパク質は、エチオプラストには存在せず、葉緑体特異的であった。 2。130kDaと175kDaのDNA結合タンパク質の精製を行い、それぞれのポリペプチドのバンドがSDS-PAGEにより確認できる程度までになった。もう少しで精製ができ、抗体の作製ができる見通しである。なお、ゲル濾過の結果から、これらのタンパク質は、それぞれ、700kDa、600kDa程度の複合体を形成していることもわかった。今後、複合体形成のパートナーとなるタンパク質についても同定を進めていく。 3。葉緑体DNAをプローブとするサウスウェスタンスクリーニングによって、3個のcDNAクローンを得た。PD1とPD2については、完全長に近いcDNAを得て、塩基配列の決定に入っている。組み換え体PD1タンパク質に対する抗体を作製した。葉緑体の87kDaと50kDaのタンパク質と反応した。このうちで、87kDaタンパク質は、単離した包膜にも、核様体にも検出された。包膜と核様体を単離する条件は異なり、包膜の単離の際には、核様体が破壊され、核様体の単離の際には、包膜が可溶化されるので、この結果は、87kDaタンパク質が、包膜と核様体の結合に関与していることを示唆している。
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