研究概要 |
本年度は,葉緑体DNAと結合する3種類のタンパク質をコードするcDNAの塩基配列を全て決定した。葉緑体包膜に存在する130kDaのDNA結合タンパク質の結合部位として同定された.414bpの葉緑体DNA断片を用いたサウスウェスタンスクリーニングによって、ウンドウλgt11発現ライブラリから,3個のDNA結合ドメインcDNAが得られた。これらの部分のクローンをプローブとして,λgt10ライブラリのスクリーニングを行い,それぞれの全長を含む配列を得た。これらがコードするタンパク質をPD1,PD2,PD3と名付けた。 1.PD1は347アミノ酸残基からなり,AT-hookモチーフを2個含んでいた。同じモチーフをもつ核のHMG-I/Yタンパク質とは似ていなかった。抗PD1抗体を用いたウェスタン分析では,葉緑体で50kDaと87kDaのバンドが検出されたが,核でも40kDaのバンドが検出された。サザン分析と5個のcDNAクローンの解析の結果から,PD1は多重遺伝子族を形成していることが推定され,今後,遺伝子とタンパク質の対応付けが必要である。 2.PD3は1629アミノ酸残基からなり,AT-hookモチーフを5個含んでいた。中央には,C..Cモチーフが10個あり,金属との結合が考えられる。ウェスタン分析の結果,葉緑体核様体に局在する130kDaのタンパク質が反応した。典型的な葉緑体移行シグナルを持たないPD3の葉緑体への移行の機構は,今後の課題である。 3.PD2は,632アミノ酸残基からなるb-ZIPタイプのDNA結合タンパク質であった。中央部に37アミノ酸残基からなる6回繰り返し配列があることが特徴である。PD2の抗体を現在作成しており,近いうちにタンパク質の局在についての結果が得られる見込みである。
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