研究概要 |
ドナリエラ細胞の可溶性画分から、カルシウム依存性プロテインキナーゼ(CDPK)を2万倍に精製し、その酵素学的諸性質を明らかにした。ついで抗CDPK抗体を作出した。この抗体によってベクター・プライマー法によって作製したcDNAライブラリーをスクリーニングして、3つのCDPKcDNAクローンを得た。このうちの1つDPK3をプローブとして全鎖長を含むcDNAを単離し全塩基配列を決定した。これから演繹されたアミノ酸配列はN末端側にキナーゼドメイン、C末端側にカルモデュリン様配列、両者に挟まれて偽基質ドメインを含む典型的なCDPKであることを示した。 ドナリエラに高・低浸透圧ショックを与えると、基質特異性と活性化の時間経過を異にする40-kDaプロテインキナーゼが活性化を受けた。それぞれをHAP・LAPキナーゼと名付けた。これらの活性化は蛋白質リン酸化を介するものであった。この活性化の過程には細胞礎質Ca^<2+>の上昇が推測されたので、エクオリン導入タバコ培養細胞を用いて、その可能性を検討した。タバコ細胞に低浸透圧ショックを与えると、70秒後をピークとする一過的な細胞礎質Ca^<2+>の上昇が観察された。これに引き続いて50,75,80kDaのプロテインキナーゼが活性化された。これらの活性化は蛋白質リン酸化を伴っており、CDPKの関与が示唆された。 汽水産車軸藻シラタマモには抗ドナリエラCDPK抗体と交叉するCDPKが存在する。抗体を細胞礎質に注入した細胞に、低浸透圧ショックを与えると細胞礎質Ca^<2+>の上昇が起こるが、その後の膨圧調節が抑制され、CDPKが膨圧調節に関与していることが示唆された。 このようにCDPKは藻類および高等植物の浸透圧シグナルの伝達と浸透圧調節に、深く関与していることが明らかになった。
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