植物ホルモンアブシジン酸(ABA)による転写レベルでの複数の遺伝子発現制御機構について分子レベルで明かにすることを目的としている。我々はABAにより転写レベルで誘導される2種の遺伝子のABAによる発現誘導に関与する因子が異なっていることを示唆する結果を得た。本研究ではこれら2種の遺伝子のABAによる異なった発現誘導に関与する転写制御のシス及びトランス因子を同定し、ABAによる遺伝子発現誘導の2種の制御系を分子レベルで明かにすることを目的とする。平成7年度はそれぞれのシスエレメントに結合するDNA結合タンパク質について解析を行った。rd29遺伝子のABAによる転写誘導に関与するシスエレメントに結合するDNA結合タンパク質についてゲルシフト法を用いて解析し、乾燥誘導に関与するシス因子DRE(TACCGACAT)に特異的に結合するタンパク質因子をシロイヌナズナ核抽出液中に検出した。rd22、rd29遺伝子のABAによる転写誘導に関与するシスエレメントに結合するDNA結合タンパク質のcDNAをSouth-Western法を用いてクローニングを試み、rd22遺伝子の調節領域に結合するタンパク質のcDNAをクローニングした。塩基配列を解析した結果、bHLHドメインを持つ転写制御因子のMYCとの相同性が見いだされた。rd29遺伝子のDREに結合するタンパク質のクローンは得られなかった。既にクローン化しているABA誘導性のMYB相同性遺伝子について解析を行い、MYBタンパク質がrd22遺伝子の転写調節領域に結合することを示した。
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