研究概要 |
フィトクロム分子上の機能ドメインを同定し、その情報伝達に機構に関する知見を得るため以下の研究を行った。平成6年度に得られたphyB断片過剰発現植物について下胚軸の伸長阻害を指標とする光生理学的解析を行い、phyB断片が、内在性のphyBの働きを促進しphyAの働きを阻害することを確かめた。次に、この現象の分子機構を探るため、phyB断片が、内在性のphyAやphyBと二量体を形成するかどうかを免疫沈降を用いて調べた。その結果、二量体型性の可能性は低いことが示唆された。以上の結果を論文にまとめて現在投稿中である。(Sakamoto & Nagatani,Plant Mol.Biol.)。また、酵母のtwo-hybrid法により、当該フィトクロム断片と特異的に結合する蛋白質を、シロイヌナズナのcDNAライブラリーを用いてスクリーニングしたが、目的とするのは得られなかった。さらに、GUSをつないだphyB断片の細胞内分布を組織染色により調べた。その結果、phyB断片に核移行活性があることが示唆された。phyAが細胞質に分布することから、フィトクロムは細胞質で働くと長い間考えられていたが、我々の発見はこの定説を覆すものである。そこで、プロトプラストの免疫組織染色を行い、野生株の葉肉細胞でもphyBが核に存在することを確かめた。これらの結果は、他のプロジェクトの結果をまとめて、現在投稿中である(Sakamoto & Nagata,EMBOJ.)。さらに、フィトクロムは遺伝子発現調節を行っていることがよく知られているので、現在、フィトクロムとDNAの直接的な結合の有無を分子生物学的方法により検討している。
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