生殖腺刺激ホルモン遺伝子の発現調節機構とホルモン産生細胞に関して以下のような研究を実績を得ることが出来た. 1.下垂体前葉から転写因子cjunならびにcFosをクローニングし、量因子が下垂体前葉に存在することを初めて証明した. 2.これらの因子が、視床下部ペプチドホルモンGnRHによる生殖腺刺激ホルモン遺伝子の発現調節のなかで、どの様な役割を果たすかを調べた.その結果、2つの因子mRNAはGnRHの作用によって増加することが判り、GnRHが転写を促進する生殖腺刺激ホルモン遺伝子の発現に関与することが明らかになった. 3.この実験に基づいて、タンパク質間相互作用を利用してcjunと相互作用する転写因子のクローニングを行った.その結果、ATF4を下垂体で初めて同定した.このATF4はcFosとも相互作用し、下垂体における転写因子がとるヘテロ2量体の一部が判明し、下垂体ホルモン遺伝子発現の分子機構に新知見を与えた. 4. GH遺伝子の組織特異的因子と知られるPit1に類似の分子が、GH以外の下垂体ホルモン遺伝子の組織特異的な発現に関与しているのではないかと考え、ブタ下垂体前葉のcDNAライブラリーで検索したが、ブタPit1因子のみがクローン化された。また、ブタPit1因子はGH遺伝子の発現を促進する視床下部ペプチドホルモンGRFによりそのmRNAが促進したが、その促進はGH遺伝子の発現とは関連しないことが判った. 生殖腺刺激ホルモン遺伝子の発現調節領域に対する特異的結合因子を検索する、酵母内発現系ベクターを構築し因子のクローニングを進めた.約100万個から25個の候補クローンが見つけたが、さらに解析を進めたところいずれも、スクリーニング過程における偽陽性反応によるものであることが判明し、さらにクローニングを進めている.
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