研究概要 |
1,マツバランの地下茎は、頂端細胞前駆体が約半分の派生細胞中に生じ、しかもその半分が新頂端細胞となる。このような不規則な頂端細胞形成が地下茎に特徴的な不規則な分枝様式を生む。それに対して、地上茎は、頂端細胞の非頂端細胞化に平行して分裂組織中に2個の新頂端細胞が生じることによって、規則的な2又分枝を行う。このように異なった頂端細胞形成様式が、地下茎から地上茎が分枝する過程でどのように変化するかを調べた。2又分枝を行う前の若い地上茎では、頂端細胞前駆体の形成頻度が徐々に低くなり、分枝直前では前駆体細胞は形成されなくなる。それ以後は地上茎に典型的な2又分枝の新頂端細胞形成が起こる。このように、頂端細胞形成における細胞分裂パターンの変化は茎の外部形態の変化の遅れて起き、地下茎から地上茎への変換の引き金にはなっていない。マツバラン地下茎は、分裂組織の動態と他の形態を考え合わせると、茎とは異なる軸状器官であり、化石のみから知られた原始的なテロムと相同であると推定される。 2,Oleandropsisは1種のみからなるウラボシ科の属で、根茎が背腹性を示さず放射相称である点でウラボシ科の中で特異的である。科の中におけるこの属の系統上の位置を決めるために、rbcL塩基配列に基づく分子系統解析を行った。その結果、Oleandropsisはミツデウラボシ群の中の1系統にすぎないことが分かった。したがって、その特異な根茎の構造はミツデウラボシ群の内部における系統分化の1つとして生じたと推定される。しかし、背腹性から放射相称への茎構造の変化は極めて異例であり、形態進化上興味深い。 3,小葉の起源を解明するために、イワヒバ属を用いて、茎頂において小葉がどのように発生分化するかを調べることを試みた。そのため、小さい小葉観察に適した鋳型作成法の改良を行った。今後、小葉の形成を外科実験等によって調べ、小葉の系統発生解明の手がかりとしたい。
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